目次
概要
- 人類が生み出した究極の疑問は「存在の疑問」
- 少しその存在の疑問について考えてみた
- 特に、大概の疑問は、目的論と機械論で理解できるので、それのメモの残す
存在の疑問とは
存在の疑問は次。
Why is there something rather than nothing?
(なぜ何もないのではなく何かがあるのか?)
- 日常的にあらゆる疑問がある
- ただし、それらの疑問の究極系は「存在の疑問」である
- どの疑問も最終的に「なぜそれが存在するのか?」に行き着く
- 上の格言はゴットフリート・ライプニッツが定式化した
目的論と機械論とは
目的論 vs. 機械論
目的論と機械論を比較すると次になる。
概念 | 特徴 | 決定性 | 自由意志 | 関数 | 存在 | 状態 | 見方 | 例 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
目的論(Teleology) | 生物関連 | 非決定的 | 有り | variant function | 発明的 | dynamic | 主観的・相対的・意見 | 人 |
機械論(Mechanism) | 自然(物質)関連 | 決定的 | 無し | invariant function | 発見的 | static | 客観的・絶対的・事実 | 物 |
- つまり、目的があるのか、因果律があるかの違い
- つまり、この世界の存在は機械のように決定論的な因果があるのか、
- もしくは、この世界の存在には、何かの目的論的な意志が背景にあるのかの違い
- つまりは、世界の解釈の違いという事
- 他の例だと
- 地球の軌道が機械論で予測ができるように、人の行動も目的論に予測ができる
- 都会は目的論的で、田舎は存在論的に存在が説明できる
自由意志について
- 上述の表を見ると、単純に人は非決定的なアルゴ(variant function)を自由意志と呼んでいるだけなのかもしれない
- ただし、数学的には関数は決定的に定義できる
- その場合は、パラメーターの同定や予測が難しい人の行動を、自由意志と呼んでいるのかもしれない
価値観は機械論から目的論へ
- 中世は日本も西洋も機械論的な感じがある
- 殿に忠義を尽くす日本と、デウスへの信仰をする西洋
- 例えば、封建制度の日本では機械論的な感じがあり、それは言葉にも表れている
- 有名なのは「是非もございませぬ」や信長の口癖の「是非も及ばず」
- 是非も及ばずの意味は、「善悪をあれこれ論じるまでもなく、そうするしかない、仕方がない」という意味
- つまり、現代的に言うと「しょうがない」に近い
- 是非=良い・悪い=道理、なので、是非もない=道理がない=宿命ということ
- 西洋は民主化以降は自由主義であり、日本も戦後はシンプルな自由主義なので、目的論的な感じがある
不確定性原理
ただし、あくまで哲学的な話なので、機械論が完璧に正しいとは思わない。
- 決定的か否かはハイゼンベルクの不確定性原理が適用できる
- つまり、自己言及のパラドックスもあるので、マックスウェルの悪魔的な事は起きない
- なので、厳密には機械論の通り、自然は科学的には決定的なアルゴだとは言えない
- 古典力学は決定的だが、量子力学は確率的に決まるため
- ただし、便宜上形式的に機械論は決定的という立場で論ずる
アリストテレスの四原因説
- 有名なのがアリストテレスの4原因説
- 作用因と目的因が目的論的であり、質量因と形相因が機械論的でもあるかもしれない
究極の疑問の答え
物理
古典力学的には、「質量の無いものは存在しない」。
シンプルに存在する=>質量があると言う事。
$$ E = mc^2 $$
ただし、量子力学までいくと光子は質量がない。
そして、ヒッグス粒子が質量を与える。
また、完全な真空は空間しかないので、何も存在しないと定義できるかもしれない。
証明
- 数学で存在の証明は論理揮毫で表すだろう
- 量化記号
- 「∃x; P(x)」
- 「P(x)が成り立つxが(少なくとも1つは)存在する」
- 存在記号
- 「∀x; P(x)」
- 「すべてのxについてP(x)が成り立つ」
- 全称記号
- 「∃x; P(x)」
- つまり、形式化されたら、形式化された中で、形式化されたから存在するという答えだろう
ゼロ
- 逆説的にゼロは無いものがあるという概念
- つまり、無いものすらあるという事なら、全てあるという考え
- ないという事はあるので、存在はあるといってもいいかもしれない
- ではあるものが無い事はどいう表現になるのか?
- それは空の空間だと思う
- つまり、Zeroを拡張すると、Voidになると思う
- 集合論だと、∅(空集合)
- 結局、形式化する以上「~がある」になる気がする
目的論
- デカルト的になるが、考えている自分はある
- そして、存在する事で認識して生物としての目的を果たせる
- 故に、人間がいるからその疑問が作られるだけという事
- 生物として考える目的(レゾンデートル)があるから、故にその究極の疑問が存在するという答え
機械論
- 機械論的には、自然は決定的と説明ができる
- 故に、アルゴリズムがあるから宇宙があるでFinal Answerになる
- この疑問の存在は、無限や宇宙やあらゆる存在を包含している
- つまり、自然、宇宙には目的は存在しない
42
- ちなみに、銀河ヒッチハイクガイド(小説)だと、その答えは42
- プログラマーはよくseed値に42を使いがち
- 決めつけるのが一番簡単な答え
空
- 事物は本質を持たず、恒常的な自己同一性や独立した実体を持たないという教え
- 根底には、諸行無常で常に変化し続けている価値観がある
- 机の上に置いた鉛筆は100年後には朽ちている
- いつからか?それは時々刻々と今から
- つまり、時々刻々と変化もしているし、自己同一というIdentityも仮初と言う事
- その考え方だと、そもそも存在自体もあるようで無いという結論
モナド
- ライプニッツが定式化した究極の疑問には、ライプニッツの哲学が答えているかもしれない
- ライプニッツのモナドは延長・形・可分性を持たず独立して自律的に変化するモノ
TODO: 難しいので、後で調べる
Fiction
- この世界はイリュージョンという事葉がある
- 宗教や言動にせよ、人間はFictionを信じる性質がある
- その点からそもそも存在がTruthでは無くてもよいかもしれない
- プラグマティズムに有用だったらそれでいいという考え方
情報工学
- 情報工学の巨匠ジョン・ホイーラーが提唱したIt from bitという考え方
- 世界のありとあらゆるものは情報であり、その情報(bit)を観測することによって存在(it)が生まれる、というもの
- つまり、「世界が存在する」と仮定なんかしなくていいという事
- 「世界が存在する」ように感じる・そのような情報を観測する、それだけが唯一人間に出来ること
- であるならば、それこそが世界の真理なのだろうという事
アリストテレスの存在論
アリストテレス哲学では次の4つの概念が大切。
- 実体(substance)
- 実体は物事の本質や根本的な存在
- 実体 = 形相 + 質料
- 実体の本質(形相) は不可視・不可触、なぜなら偶性(姿や形)と形相を伴ってはじめて現れるから
- 実体の本質(形相) は物事の本質や根本的な存在なので、かつ恒常的に存在する
- 偶性(accident)
- 偶性とは大きさ、色、かたちなどの属性や特徴を持つ
- 偶性は時間や状況によって変化するが、実体そのものの本質は変わらない
- 形相(form)
- 形相は物事の本質や本性を示すもので、そのものが何であるかを決定する
- 形相は質料と結びつくことで具体的な形や状態を持つ
- 質料(matter)
- 偶性は実体に付随する属性や特徴であり、物事の本質を変えないもの
- 偶性には大きさ、色、形、位置などが含まれる。これらは時間や状況によって変化するが、実体そのものは変わり
木の例
- 実体
- 「この木」という具体的な存在(「木」というとイデアなので実体でない)
- 形相
- 木としての本質(例えば、根、幹、枝、葉の形や構造)
- 質料
- 木を構成する物質(例えば、木材)
- 偶性
- 木の具体的な属性(色、大きさ、形、位置など)
Javaで例えると分かりやすい。
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プラトンとアリストテレスの味方の違い
プラトンのイデアも有名だが、アリストテレスの実体との違いは以下。
- 存在の場所
- 実体は具体的な物事の中に内在し、形相と質料の結合体として存在する(例:あの木)
- イデアは物質世界の外に存在し、事物の理想的な型として存在する(例:木という概念)
- 役割
- 実体は具体的な物事の存在の基盤であり、その本質を決定するもの
- イデアは物事の理想的なモデルであり、具体的な事物の原型や型を提供するもの
- 変化と不変性
- 実体は具体的な事物に内在し、形相と質料の結合として存在し、具体的な属性(偶性)の変化に関わらず本質は変わらない
- イデアは永遠で不変のものであり、物質世界の変化に影響されない
結論
- 存在についての疑問は人類が持つ永遠の疑問だろう
- 答えは100万年経っても出せないだろう
- 自己言及のパラドックスに似た感じである
- ただ、WHYの答えは出せずとも、HOWの答えは出せそうな気がする
- それは目的論と存在論によるものである
- 地球の軌道が予測できるように、人の行動も目的で予測できる
- 存在の理由は分からないが、ある事の予測はできる
- それも1つの回答なのかもしれない
参考文献
- 人を動かす6つのアプローチ、「影響力の武器」とは? | CONTENT MARKETING LAB(コンテンツマーケティングラボ)
- Hungry judge effect - Wikipedia
- ガリレオ・ガリレイ名言(日本語、英語) - eStory Post
- <「統計学は科学の文法である」とKarl Pearsonは言った>および<K.Pearson=記述統計 vs R.A.Fisher=推測統計>という言説に関して - Tarotanのブログ
- 銀河ヒッチハイク・ガイド - 見積もり加算
- なぜ何もないのではなく、何かがあるのか - Wikipedia
- Astroturf | Existence is God
- 数学記号の由来について(4)-論理記号(∀、∃、∴、∵等)- |ニッセイ基礎研究所
- 宇宙を決定しているのは人間だった!?― 猫でもわかる「ビットからイット」理論 - 誰が得するんだよこの書評
- アリストテレスの四原因説 – スマホ教室ちいラボ